9月10日(土)に、Sake2020 Project の第6回目のセミナー<日本酒ヒストリア 近現代史を探る①「吟醸酒質の確立~9号酵母と熊本の酒>を、目黒区 不動前の「水仙」さんで開催いたしました!
Sake2020 Project held the 6th seminar titled “The Sake History” ~ Sake yeast kyokai No.9 yeast and Kumamoto Sake ~ on 10th Sep.
http://peatix.com/event/194606
日本酒作りにおける「アルコール発酵」のプロセスにおいて、せっせと働いてくれる単細胞生物といえば、そう、「酵母」です。自然界にウヨウヨ漂っているものでもありますが、自然頼みだと何かと思う通りにはいきません。狙ったクオリティのお酒を醸すために、ちゃんと働いてくれる酵母が、日本酒の近代化にとっては必須でした。
春の震災において大きな被害を受け、未だその建て直しに奮闘している熊本の酒蔵。そこで戦後間もなく誕生した「熊本酵母」は、その品質の高さから高い人気を誇り、「きょうかい9号酵母」として分離され、日本醸造協会が広く日本に頒布しました。
松崎晴雄先生の柔らかな口調で語られるお語は熊本酵母が生まれる前に遡ります。細川藩政下の頃から「自慢の御国酒」であった赤酒一辺倒の熊本の酒造環境、若く情熱的な野白金一先生による品質向上のための働き、技術的品質を向上させるため20蔵ほどが団結しての研究所の設立、香露の蔵付き酵母からの「熊本酵母」分離、その他数え切れない革新を経て「吟醸酒」という新しい日本酒は生まれ、吟醸酒ブーム、「YK35」の時代へ。
そういった出来事はすべて、連綿と受け継がれてきた流れであったという「歴史」を学ぶことができました。
As we know, yeast is necessary for the fermentation of every alcoholic drink. Yeast converts sugar to alcohol and carbon dioxide. And sake yeast has a direct affect on the sake’s aroma and flavor.
Yeast itself are floating in the air, many strains of naturally occurring had been used for brewing sake since long ago. The Kumamoto breweries also had. Dr. Kinichi Nojiro a.k.a. ‘The god of sake’ made a significant contribution to improve the quality of Kumamoto sake. He established a joint laboratory with more than 20 breweries, developed the KUMAMOTO yeast isolated by Kura of Koro and brought many other innovation to the sake industry.
We have to be grateful to him because he is the person who developed Ginjo sake, the favorite for many sake lovers.
「流れ」というのものは、不思議な縁を紡いでいきます。
震災前に取材をされていた dancyu 編集の 神吉佳奈子さんは、震災後の5月に、再び「香露」を醸す熊本県酒造研究所を訪れて、その被害の状況を目の当たりにするとともに、日頃からの備えこそが、甚大な被害の中、熊本酵母を守ってきたことを改めて感じてこられました。
複数のパターンを想定し、幾重にも守られている酵母の保管方法、甚大な被害が起きても守るべきところには2次被害が及ばないように考えれた設計、普段の日本酒造りを行うには効率的でなくとも、守るべきものを守るための「面倒な工夫」。
平和で何もトラブルなく、予定していた通りに過ごせれば良いですが、この世の中そんなことは、ありえません。絶対に、何かが起きます。どんなことが起きても「守るべきもの」が何か、ということが、人から人へ、伝承されているということの尊さを、教えてもらいました。
Ms. Kanako Kanki, an editor of dancyu magazine reported us her visit to Koro brewery a few weeks after the earthquake. She found their pride as a guardian of Kumamoto yeast from many considering crisis preparations. They have paid close attention to save Kumamoto yeast from a building design to ways to preserve it. Not only technical methods but the sprit has been handled down to next generation. We realized the sprit of Dr. Nogiro is still alive among them.
松崎 晴雄先生は、その実体験に基づいて実感されてきた、日本の各地にひっそりと息づいている日本酒に類い稀な貢献をしてきた地域を、今後「日本酒遺産」として再認識していくアクティビティをSAKE2020 Projectで展開していく予定です。
日本酒の消費を世界に広げていく活動と、日本の Local や歴史を紐解いていく活動、それは両輪の働きをして、これからの日本酒の世界をドライブしていくことになるんだなあ、と感じた1日でした。